平成23年度大会(第2回)大会報告を載せました

桜門体育学会平成23年度(第2回)大会報告

大会委員長
西川大輔(文理学部体育学科准教授)

 

3月に発生しました東日本大震災は各地に大きな被害をもたらし,現在も一日も早い復興が望まれています.本桜門体育学会会員にも震災の影響が及んでいると聞いています.今回会場となった日本大学文理学部の体育施設の一部にも被害が及び,特に総合体育館と第2 体育館体操場の天井部分の損傷で,一カ月以上立ち入りが禁止されていました.

未だ余震の続く中,予定通り平成23年12月11日(日) に桜門体育学会大会を日本大学文理学部百周年記念館で開催できたことは大変喜ばしいことであり,関係各位のご尽力に深く感謝申し上げます.桜門体育学会は新たな船出から2年目を迎えました.平成23年度大会には,多くの会員および準会員(体育学科学生)が本学会大会に参集(正会員58名,準会員39名の参加,26題のポスター発表)し,今後の健康やスポーツ科学の発展に向けて,有意義な発表や討論を活発に行っておりました.

【大会行事】

(1) 学会企画シンポジウム

「アスリート育成の未来」

シンポジストの簡単な紹介と要旨

  シンポジウムの報告

シンポジスト:松本 恵(日本大学文理学部),小山貴之(日本大学文理学部),竹俣壽朗(公益財団法人日本オリンピック委員会)

司会:西川大輔(日本大学文理学部)

(2) 理事会

(3) 特別講演

「自然災害と体育・スポーツ~東日本大震災から学ぶべきこと・教えるべきこと」

講演内容はこちらです

基調講演講師:安倍 淳 氏(株式会社朝日海洋開発 代表取締役)

司会:野口智博(日本大学文理学部)

(4) 一般発表(ポスター)

 発表演題と発表者の一覧をご覧ください

座長:深見和男(日本大学国際関係学部),近藤克之(日本大学経済学部),服部英恵(日本大学短期大学部)

(5) 総会

(6) 懇親会

【大会概要】

午前10時より百周年記念館国際会議場にて予定通り学会企画シンポジウムが開始されました.会場には先生方や体育学科OB,また多くの現役学生の姿が見られました.シンポジウムでは,「アスリート育成の将来」をメインテーマとして,各シンポジストそれぞれの専門の立場からお話をいただきました.司会は私,西川が担当させていただきました.

松本恵先生からは「育成期の栄養教育から個性に合わせた栄養サポートへ -栄養士の関わり- 」の題目で,公認スポーツ栄養士の役割や栄養教育の重要性,実際のジュニアに向けた栄養指導の紹介についてお話をいただきました.「食事で人の寿命を縮めることができる」という言葉は印象的で,食事の重要性を痛感しました.

次に,小山貴之先生より「ケガの予防のためのトレーニングとコンディショニング」について,トレーナー,スポーツドクターとしての立場からケガ予防のためのプログラムの国際的動向やコンディショニングに関わる最新の考え方などをお話しいただきました.ケガ発生後のリハビリや治療ではなく,「予防医学」についての内容は斬新でした.

最後に,竹俣壽郎先生より,ご自身の職場でもあり,現在日本のトップアスリートの活動拠点でもあるナショナルトレーニングセンターと国立スポーツ科学ンターの紹介と,それぞれの施設での選手のコンディショニングに関わる取り組みについてお話をいただきました.競技種目を超えたチーム日本としての新しい取り組みなどは,ロンドン五輪やそれ以降の日本のスポーツの活躍を予感させるものでした.

シンポジストの先生方からの講演では,アスリート育成のためには技術コーチングのみならず,様々な方面でのサポートが必要であり,その重要性は時代とともに拡大していること,また,それぞれの分野における最新の研究や情報をいち早く,正しく取り入れることの大切さを認識させるものであり,それと同時にアスリート育成の現場における今後の課題や方向性が指し示されました.選手のコンディショニング管理はアスリート育成の重要な課題であり,特に競技結果を求められる選手は今後,技術やテクニック以外の様々な分野との関わり方や知識,実践が求められることとなるでしょう.

午後から行われた基調講演(特別講演)では,「自然災害と体育・スポーツ~東日本大震災から学ぶべきこと・教えるべきこと」と題し,被災者,ボランティア,水難事故防止のために指導する指導者,それぞれの立場の方々からお話しいただきました.まず,野口智博先生から東日本大震災における避難成功者の運動経験や,避難に際しての被災者が感じた必要条件ついて,実際に被災地で行った調査結果についてお話しいただきました.引き続き,野口先生に司会をしていただき,講師の株式会社朝日海洋開発代表取締役の安部淳氏をご紹介いただきました.震災時に安部先生ご自身が大津波に飲み込まれながら九死に一生を得た貴重なエピソードを,ご自身で描かれたイラストや映像とともにご紹介いただき,聴き手側はまさにその時の自然の脅威や恐ろしさを疑似体験するようでした.

最後に,被災地で実際に復興支援活動をした体育学科生による,その活動内容と彼らの目から見た被災地の現状,また,現地の人たちとの交流の様子の紹介がありました.自然災害の恐怖を改めて認識し,生きることの大切さ,生きていることのありがたさを思うと同時に,災害に直面した時のためにできうる対策,ボランティア活動の意義,体育・スポーツ指導者が考えていかなければならない問題について深く考える良い機会になり,大変貴重で有意義な講演内容でした.

14時30分から百周年記念館エントランスホールにて26題のポスター発表が行われました.現役学生による発表も積極的に行われ,発表後の質疑応答も既定の時間ぎりぎりまで活発に議論されていました.17時30分から第2体育館1階カフェテリア「チェリー」にて懇親会が開催されました.約30名の参加があり,親睦を深めておりました.また,理事会,総会も円滑に進行され,つつがなく終了したことを付け加えておきます.

最後に今回の大会にご尽力いただいた先生方,研究室,大学院生,そしてご参加いただいた皆様に心から御礼を申し上げます.